レブロ活用事例

BIM がもたらすメリットによる建築生産システムの変革の可能性を追求

建築設備工事会社として、70 年以上の長い歴史をもつヤマト。北関東最大手のサブコンである同社は、NYK システムズの建築設備専用CAD「Rebro(レブロ)」を採用してBIM 化への取り組みを推進し、サブコンにおけるコンピュテーション活用のトップランナーとして知られている。同社は、BIM の有効性を考慮しプロジェクト毎のレベルを設定しながら柔軟に運用。さらに、バーチャルと実物商品で効果的に投資効果を体感できる「サポートセンター」を設立し、BIM の「見える化」のメリットを強力に発揮させ、クライアントの意思決定の促進と生産性の向上につなげている。

レベルを設定しBIM 化を推進する

 環境技術に配慮した建築設備工事会社として、省エネ、空調工事、水処理、上下水道、冷蔵・冷凍設備をはじめ、躯体や内装改修までの技術とサービスを提供するヤマト。建物全体のトータルマネジメント企業を目指す同社では、設備CAD としてNYK システムズのレブロを統一して採用している。同社では、レブロのBIM データを活用し、企画から設計、加工を含めた施工、維持管理まで一連の流れを社内で完結できる仕組みを整備。プロジェクトの状況や関わり方に合わせて、ものづくり全体の生産性向上に役立てている。
 現在ヤマトでは、町田 豊代表取締役社長の方針に基づき、生産設計(BIM)をレベル1 から3 まで設定してプロジェクトごとに取り組んでいるという。

レベル1 は、建築情報が提供されず設備との納まり調整ができない場合でも、レブロで設備図面を作成するもの。レブロのBIM データは設備情報の自動積算と数量拾いを可能にするため、生産性が大きく向上する。
レベル2 は、建築情報を反映した設備図面をレブロで作成する場合。建築と設備の取り合いを事前に確認し、整合性を持たせて配管システムの工業化を促進する。レベル3 は、フルBIM。建築・設備・電気の企画-設計-施工-運用まで自社で担当する案件について、すべてのフェーズでレブロをはじめとしたBIM ソフトを活用する。
 同社執行役員 企画推進部長の鳥居博恭氏は、「生産性の向上は、部分的な最適化では限界があり、トータルで考えなければなりません。建築+設備+電気、また設計会社、施工会社、建材・設備メーカー、メンテナンス会社が同じ土俵で、BIM という道具でつながっていく必要があるのです」と語る。こうした考えは、現在は代表取締役会長の立場にある新井 孝雄氏の推し進めた「建築生産システム改革」、並びに設備工事の工業化の実現に向けた取り組みの延長線上にある。「グローバル経済で競争している製造業のように、市場ニーズからコンセプトを決め、コストや手間、時間を大幅に削減して生産性を上げていかないと建設業はいずれ減退してしまうのではないか。そのためには、企画、設計からものづくり、運用、保守までが連携し、クライアントの視点を持って企業活動をしていかなくてはならない。全社員はそれぞれの立場で考えイノベーションを起こしていくという新井会長の強い意識は、いま全社員に浸透してきています」と鳥居氏は語る。

 

BIM化により生産性を上げるための工業化を推進する

 前述のレベル2 の段階にあるプロジェクトであっても、建築との取り合いを把握しながら、レブロで設備図面を前倒しで確定するように進めることで、仕様変更などに伴う手戻りは格段に減り、現場の作業は大幅に省力化できる。またモジュール化や部品種類の減少によって、工場の配管加工などの生産にも無駄がなくなり、全体のコストダウンが見込める。さらに、案件によっては、継手を合理的に省略したり、材質をより高品質なステンレスに変更したりするなどのVE 提案も同社では行っている。「当社がなぜBIM に積極的に取り組むかというと、“ 生産性を上げるための工業化” を図るためです。この考え方は住宅のプレハブメーカーが既に実践しています」と鳥居氏。
 また、鳥居氏が喫緊の課題としているのが、建物資産情報管理やファシリティマネジメント( 以下、FM) へのBIM の活用である。「建物、設備の運用段階でBIM を使って資産情報を体系的に管理できると、部品の交換やチューニング、修繕内容までの各種情報が一元管理できます。FM でのBIM 活用にはまだまだ課題も多いですが、それでも、現状では建築、設備のできるところから始めないと進まないことを認識しています。クライアントやメンテナンス会社が有効に活用できるようなアウトフレームを決めながらシステム構築をしていきたいと考えています」と意気込みを語る。

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建設フローの改革につながるサポートセンター

 そして、ヤマトはBIM の大きな特徴である「見える化」をより幅広く、効果的に推し進めるためのリアルな場をつくり出した。同社の設備配管加工工場に併設し、2015 年11 月にオープンした「サポートセンター」である。3DCGで実物大の完成イメージを疑似体験できる「バーチャルルーム」、建材・照明・空調・衛生など、21 社のメーカーの実物商品に触れ、体験、比較することができる「体感ブース」、そして最先端の配管技術やユニット、モジュール技術を体感できる「技術LABO」で構成する体感型ショールームで、空間や意匠、動線、オペレーション、メンテナンス、資産管理までをワンストップで確認できるため、投資効果の透明化を図ることができ、クライアントや設計者、施工者の意思決定と生産性を高めることを目的として設立したという。同社企画推進部企画推進課課長の莅戸 和之氏は「早期の意思決定をサポートしています」と語る。
 「バーチャルルーム」で用意されているのは、60インチの液晶を21 面にわたって配置した大型マルチスクリーン。左右は角度を付けて設置されていて、中央の9面は4K対応。スクリーンいっぱいに映し出された画像の前に立つと、これまでにない高い臨場感が得られる。PC1 台で制御できるようにシステムが組まれており、あらかじめ用意した完成予想3DCG パースや建材や内装材などの詳細仕様、サンプル画像、設備施工イメージを映し、クライアントや関係者への確認や提案を効果的に行うことができる。リノベーション案件でビフォー・アフターの姿をプレゼンテーションすることによる効果は絶大だ。情報共有と合意形成が促されることで、工事の生産性向上が見込める。

 また、設備関連情報の見える化でも効果を発揮している。莅戸氏は「室内では制気口、衛生器具、消火栓やコンセント、照明器具、室外ではベントキャップやウェザーカバー、空調設備の室外機などが必ず必要です、工事が進んでからクライアントに“ こんなところにこんなモノが現れるとは思ってもいなかった”と言われることが多くありました。ここでは、レブロをはじめとした3D ソフトで設備関連機器の部品までつくり込んだ様子を事前に実物大の大きさで見せることで、見落としが少なくなり、竣工後の完成イメージを実際に近いリアルな形で確認でき、手戻り、手直しが無くなるのです」と効果を語る。そのほか、工事段階での資材置き場や搬入・駐車スペース、養生、足場などの仮設、施工計画も3D で見せることで、変更や必要な申請がその場で確認でき承認されたこともあるという。「おかげさまでスタート以来、ほぼ毎日継続的に利用されていて、生産性向上という点で予想通りの効果を生み出しています」と莅戸氏。このサポートセンターは、自社での活用のみならず、建築設計事務所やゼネコンからの利用依頼の申込みに対応しており、ヤマトの取り組みへの信頼を得て、パートナーとして、またマネジメント企業として認知されている。そして、ヤマトへの直接の受注も増えているという。利用者増加に伴い、メーカーが出展する「体感ブース」の展示内容も、拡充中だ。
 「体感ブース」には、ダイキン工業、TOTO、LIXIL、パナソニック、サンゲツ.....など主要な大手の建材・設備メーカー21社が独自にブースを設け、詳細な商品情報を顧客に直接プレゼンテーションできる。バーチャルでは確認できない製品の質感や動作性能、効果を実際に体感できる点が大きな特長である。

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 そして「技術LABO」では、工場加工による加工管はもちろん、顧客の建物や設備の長寿命化、万全の漏水対策、エネルギーロス防止、耐震性の向上、そして、流水音の不快対策など、顧客建物の資産価値を高める、さまざまな要素技術や使用材料などが具現化されている。通常あまり見ることのない天井内や床下にある資産価値向上のための各種技術を実際に見て“ 比べていただく” ための施設となっている。「“ 建築生産システムに変革を起こしたい” という新井会長の想いから、このサポートセンターは設立されました。サポートセンターの活用により、建設の生産性の向上を図るとともに、これまでの建設フローの改革につなげたいと思っています」と莅戸氏は語る。BIM がもたらすメリットを、多方面からさらに展開するヤマトの取り組みに、建築生産システムが大きく変革する可能性を強く感じた。 

サポートセンター編 PDFファイル(1.2MB)

CORPORATE PROFILE

株式会社ヤマト

本社 群馬県前橋市古市町118
代表者 代表取締役社長執行役員 町田 豊
設立 昭和21年7月12日
資本金 50億円
従業員数 正社員 800名(平成28年3月現在)
上場市場 東京証券取引所市場第一部上場
事業概要 産業空調衛生設備、一般空調衛生設備、冷凍冷蔵設備、生活関連処理設備

 

2017.01.16 2021.12.6改


※「Rebro®」は株式会社NYKシステムズの登録商標です。 その他記載の商品名は各社の商標または登録商標です。
※記載事項は予告なく変更することがございます。予めご了承ください。
※本事例で記載されている内容、部署名、役職は取材時のものです。