レブロ活用事例

BIMの属性情報を活用して設計業務を効率化
レブロとの連携ツール開発で進める電気設備DX

株式会社トーエネックは、電気・情報通信・空調管・電力供給設備の企画・設計・施工・メンテナンスからエネルギー有効利用提案までを手掛ける中部電力グループの総合設備企業である。 同社では顧客からの強いニーズや働き方改革を踏まえ、営業本部設計部を旗頭に2.5次元CADからBIMへと大きく舵を切った。さらに設計業務の省力化・効率化を実現すべく新たなワークフローを整備し、レブロと連携する自社ツールの開発も行ったという。ワークフロー構築と自社ツール開発の背景には、どのような考えがあったのか。営業本部設計部総括グループの古守氏、古田氏、寺前氏、淵上氏にお話を伺った。

電気設備におけるBIMワークフローの導入

株式会社トーエネック 営業本部設計部総括グループのプロフィール画像

ゼネコンからのBIM案件の増加

 機械設備に比べてあまり普及していないといわれる電気設備のBIM対応。レブロを導入して大幅なワークフローの見直しを行い、自社ツールまで新たに開発したという設計部には、どのような考えがあったのか。古守氏は当時を振り返ってこう語る。
「当社は設計・施工を手掛けていますが、2020年頃からゼネコンのBIM案件が少しずつ出始めて、レブロを指定されることが増えてきました。また、建設業では2024年の4月から残業規制が適用されること、人手不足の深刻化問題、海外人材の確保・育成など、ここ数年で我々の就業環境が大きく変化すると思っています。そこで、まずは我々の設計業務からDX化による新たな価値を創出しようと考えました」(古守氏)。

 顧客のニーズや業界情勢を踏まえ、BIMの施策を始めた設計部。すでに部内で使っていたCADの後継ソフトに加え、米国製BIMソフト、レブロを含む設備専用CAD2本の計4本を比較することになった。最終的に、操作性・業界のニーズ・コストの三点で総合的に優れていたレブロを採用することにしたという。

 こうしてレブロの導入を決めた同社は、電気設計BIMのワークフロー構築を始める。まったく新しいツールを使った仕組み作りとして、具体的にどのような取り組みが行われたのか、さらに詳しく伺った。

環境の整備

 古田氏によると、まずは二つの環境整備を行ったそうだ。

 一つ目は、自社に合わせたレブロのオブジェクト整備である。ユーザー部材として標準シンボルの変更や新規追加を行い、さらに今後の拾い作業との連携や図面凡例に描く表現等を統一するため、同一部材の2Dと3Dを紐付け、トータルで約330個ほど器具名称を登録し直したという。そのほか、配線の条数記号についても自社の凡例に合わせたそうだ。

 二つ目が、従来の書式に合わせた作図基準の整備である。線種、文字の種類や大きさ、色の使い方といった標準設定を2021年度に策定。今後は運用しながら改善していくと古田氏は言う。
「環境を整備することで、既存の設備CADと同様の図面を問題無く描けるようになりました。今後の納まり検討等では施工の情報収集等を行って、本格的に図面を描いていけるように進めています」(古田氏)。

 こうした準備は、通常の設計業務を行いながら1年かけて準備したそうだ。

【図1】同一部材の2Dと3Dの紐付け

▲【図1】同一部材の2Dと3Dの紐付け

【図2】ユーザー部材登録部品

▲【図2】ユーザー部材登録部品

教育体制の模索

 教育担当の淵上氏によると、設計部では設計・施工担当者向けの講習も始めているという。基本操作はレブロHPの教材を活用して教えつつ、さらにBIM導入のメリットを感じてもらえるよう、実務で活用できる照度計算や照度分布図といった内容を盛り込んだ講習会を実施しているそうだ。
 まずは部内を対象に行った講習会だが、ゼネコンからの要望が増えている拠点からも「レブロを使いたい、ぜひ講習会をしてほしい」という声が上がっており、教育は今後も継続していくという。

 

レブロの利便性

 ツールの整備や教育などを経て、実務でレブロを使う環境を整えた同社。実際にレブロを使ってみて、業務はどのように変わったのか。

チェック業務での利用

 チェック業務を行っているという古田氏は、「系統管理や検索機能で確認や変更が早くなった」と言う。
「例えば『盤に照明器具が何台繋がっているのか』『弱電だと端子盤に何の機器が接続されているのか』など、系統管理の情報を使えば点滅機能で確認できます。チェックで『便座用コンセントに入力した容量が間違ってないか』『電源種別はACやDCが間違ってないか』など、容量を用途別ごとに拾い出ししたい場合も、容量や名称のチェックを一覧で見て変更できるので便利です」(古田氏)。

【図3】系統管理を使用したチェック

▲【図3】系統管理を使用したチェック

「自動配置」と「部屋属性」

 淵上氏は、レブロの検証時から「自動配置コマンドやデータリンクが画期的だと感じていた」と言う。また、設計担当者にとってどのBIMソフトでも共通して使える「部屋属性」は非常に便利だと思ったそうだ。
「部屋属性がレブロに入っていれば、天井高さに合わせて天井の照明器具や非常照明を自動配置できます。この機能はBIMの可能性が広がる機能なので、今後中・上級者向けの教育ネタにも入れていければいいですね」(淵上氏)。

3Dの活用

「私は納まり検討でよく使っていたので、3D機能が便利でした。ラックやバスダクトなどの部材も豊富にそろっているので、非常に作図しやすい。変更もしやすく、スピードが上がったと思います」(古田氏)。

 電気設備で3Dを使うポイントを、古守氏も補足する。
「電気で3Dを使うなら、キュービクルや発電機などの大型機器や幹線のルート検討など、分電盤や動力盤の一次側で活用するのが効率的だと思います」(古守氏)。

 また、淵上氏は作図中にさまざまな視点を確認できるのが大きなメリットだと言う。
「アラウンドビューはピンポイントで見たい部分だけを3D化して見ることもできるし、表示もリアルタイムで便利ですね。オペレーターからすると、アラウンドビューでいろいろな方向を見ながらプロット配置できるのは大きな利点だと思います。従来のCADは2Dベースで描いてから3D変換をかけていましたが、レブロなら高さを確認しながら直感的に配置・作図できる。講習会でも皆さんの反応が大きいです」(淵上氏)。

【図4】3D部材を使用した例

▲【図4】3D部材を使用した例

 

属性情報の活用

 3Dでは大型機器を対象とした使い方を提案する一方、電気設備で主流となる2Dの平面図では、「BIMモデルと連携した属性情報を活用すればよい」と古守氏は指摘する。
「電気設備におけるBIMワークフローを考えた際、設計者の《判断が必要な部分》と《不要な部分》に分け、後者を自動化していくことが省力化・効率化につながると感じました。具体的にみると、幹線やキュービクルの配置は人間が考えなくてはいけない要素なので、自動化は現時点では難しい。一方、プロットや負荷集計などの計算は、BIMの属性データを使って自動化すれば省力化が見込めます」(古守氏)。

 こうして自社仕様で作成されたのが、ExcelVBAでレブロと連携する「BIM連携ツール」(以下「ツール」)だ。ツールを使った属性情報の活用について、淵上氏と寺前氏に説明していただいた。

 まずはレブロで器具を自動配置するための準備を行う。建築図などの情報を確認し、部屋情報の入ったレブロ図面を用意する。合わせて、設計担当者はベースとなる各室諸元表(部屋単位の器具リスト)をExcelで作成する。諸元表Excelには器具の取り付け高さや一般的な負荷容量を登録したレブロのライブラリ情報が入っており、諸元表から自動配置用の情報を補完できる仕組みだ。

 諸元表をCSVで書き出してレブロで読み込むと、器具が自動でプロットされる。各部屋に高さ情報を持った器具が自動配置されるため、位置を適宜調整し、属性情報(行先の盤情報や回路番号、負荷容量など)を入力してプロット図を作成する。次はレブロからツールへの受け渡しだ。レブロの「プロパティの保存」コマンドで書き出されたCSVデータをツールに取り込むことにより、ツール側で持っているバックデータと掛け合わせて「分電盤リスト」「負荷容量集計表」「電路計算書」「変圧器計算書」といった書類ができる。

 不足する情報の補完作業やデータの確認はツール側で行う。レブロとツールで入力情報を切り分けて作業することで、効率的なBIM情報を活用した集計作業が可能となっている。また、修正もツール上ででき、書類再作成の負担も大きく減るという。

「“電気設備BIMにおいて、3Dはそもそも副産物ではないか?”という話から、属性情報を活用した省力化が必要と考えツールを検討しました。実際にツールを開発し、有効的な手段であると感じています。2022年度にはツールのデータをCAD側に返し、ツールとCAD両方の属性情報を連携して整合性の確保を考えています」(寺前氏)。

 

 

 

電気BIMのメリット

 レブロを導入し、自動化ツールを開発してBIMワークフローを整えた同社。こうした取り組みをしてまで電気設備工事会社がBIMを導入する一番のメリットは、「整合性が取れる」ことだと古守氏は説明する。
「電気設備は複数の図面にまたがるため、修正に伴う作業が膨大になります。時間的にも余裕がないときに作業が発生するため、修正は非常に大きな手間になっています」(古守氏)。
 BIMは3Dモデルから各図面を描き出すため、修正もモデル一カ所の対応で済み、図面の不整合も無くなるというわけだ。

 また、「属性情報を活用し、ツールによって担当者の計算や集計の手間が無くなることも大きなメリット」だと古田氏は言う。
「最初の情報入力で手間はかかりますが、これまで変更の度に手で集計し直していたことが、自動化で連動して変更されるようになりました。格段に楽でスピーディーになります」(古田氏)。

 ワークフローの整備により作業者間で偏っていた負担も減っていると寺前氏は語る。
「今までは設計担当者が下図を描く負担が大きかったのですが、BIMだとCADに入っている情報を利用してオペレーターさんに配線を結んでもらえばいい。オペレーターさんは少し情報入力の手間が増えますが、ツールで集計作業の手間が削減されるので、設計担当者の業務が減って平準化が図れると思います」(寺前氏)。
 古守氏によると同社では電気設備の知識をつけたCADオペレーターの育成もしており、ただの下図のトレースではなく、設計者の意図を汲んで作図できるようにしているそうだ。

 

今後の展望

 ワークフローが整備された設計部では、今後どのような活動をしていくのか。今後の展望を、古守氏に伺った。
「BIM案件ではレブロ指定の案件が多く、すでにレブロで対応しています。慣れの問題もあって2D案件では既存の設備CADもまだ使っていますが、徐々にレブロにシフトしていく予定です。設計部では、来年2023年からはBIMであろうが、2Dであろうが、原則、全設計案件でレブロを使っていく方針です」(古守氏)。

 開発したツールの自動化はさらに連携を広げていく方針で、次は積算との連携を考えているという。
「現在は弊社積算システムに手入力していますが、BIMデータから機器数量のリスト等をメーカーさんに出して見積書をデータでもらい、直接システムに取り込むなど、効率化できないか検討しています。また、最近は概算依頼の案件が非常に多くなってきています。建築BIMデータがあれば、部屋用途ごとに標準化した機器リストを作成しておき、今回開発したツールの自動配置機能を活用して配線まで描かなくても概算根拠となる機器プロットを提示できます。また、機器数量を弊社概算システムと連携することで、概算作業の効率化が図れると考えています」(古守氏)。

 設計の省力化・自動化の後は、省力化を施工現場にも広げていく考えだ。
「設計から見ても、BIMは積算や施工といった後工程の効率化に生かせると考えています。例えばフロントローディングで施工担当者も設計段階から入ってもらい、ある程度納まりを固めていけば、施工担当者の負担は減りますよね。また、施工サイドはSPIDERPLUSを使っているので、盤図を連携させて絶縁測定に使うなど、BIMの属性情報を使って連携できないかと考えています。その他、レブロでは積極的にバスダクトやラックなどのデジファブにも取り組んでいるので、施工側からすれば大きなメリットだなと思います」(古守氏)。

 

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CORPORATE PROFILE

株式会社トーエネック

本社 愛知県名古屋市中区栄一丁目20番31号
設立 1944年
代表者 代表取締役社長 藤田 祐三
資本金 7,680百万円
従業員数 4,780名(2021年3月現在)
事業内容 電力供給/電気/空調衛生/情報通信設備の設計施工・保守

 

2022.05.18


※「Rebro®」は株式会社NYKシステムズの登録商標です。 その他記載の商品名は各社の商標または登録商標です。
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※本事例で記載されている内容、部署名、役職は取材時のものです。