レブロ活用事例
作図にかける時間を省力化し、生産性を向上
3DCGを活かした”直感性”を付加価値に
正和工業株式会社は上下水道の本管工事から空調衛生の設備工事、建物工事も手掛ける総合建設業である。少子高齢化による人口減少や建物ストック型社会への移行なども踏まえ、現在はリノベーション市場に注力。「一人でも多くの笑顔のために!」というテーマのもと、売上高1000億円企業を目指し、埼玉県を中心に学校や公共施設などの建築リノベーションを行っている。
そんな同社では従業員の業務効率向上のため環境設備にも力を入れ、汎用2次元CADから3次元設備専用CADへとツールを大きく切り替えた。その理由や活用方法について、設備部の横田氏、田中氏、許氏にお話を伺った。
作図の効率化で働き方を変える
汎用CADからレブロへ
2016年に汎用2次元CADからレブロへ切り替えを行った正和工業株式会社。当時切り替えを行った理由を、設備部の横田氏はこう語る。
「うちの会社はずっと汎用2次元CADを使っていたんですが、作図にかける時間の負担が大きかったんですね。僕らの仕事は施工管理なんですけど、図面の作成以外で書類を作ったり、現場で工事の管理をしたり、写真を撮ったり、いろいろな仕事があって。作図にかける時間を省いていかないと一人一人の負担が増えてしまうんです。そこで、何か効率よくできるものを導入していこうと考えて、レブロを採用しました」(横田氏)。
実際にCADソフトを切り替えたことで、どんな点が変わったのか。
「レブロに変えて、単純に、図面を描きやすくなりましたね。汎用CADだと配管の曲がりもいちいち継手をおいて描かないといけないんですけど、レブロだと配管が曲がっていけば、継手も自動で挿入されますから」(横田氏)。
また、レブロは一つの3Dモデルから各図面を作成できるため、平断面が連動しているのも省力化につながっていると横田氏は言う。他の設備専用CADも経験がある同部の田中氏も、「一つのデータに全部のフロアを描いて、“3階のこの部屋”といった形で切り出せるのがいいですね」と1モデルのメリットを挙げた。
技術計算による効率化
図面の属性情報を活用した技術計算ができるのも、効率化につながっていると両氏は語る。
「重量計算とか静圧計算ができるのは、すごく大きなメリットですよね。材料を拾うのも楽です」と言う横田氏に、田中氏もうなずく。
「例えば作図中、納まりを検討するためにダクトの直径を絞ったり、ルートを曲げたりしていると、感覚で『これはダメだろうな』って分かるんです。そういうとき、全部の系統で静圧計算をする。計算してダメだと分かったら、現場代理人は機械の能力を上げることを提案します。そういった判断も、計算結果のExcelデータを根拠として設計担当に見せれば話が早いので助かっています」(田中氏)。
作図効率化によるメリット
「トータルで見ても、すごく効率が良くなりました。汎用CADでやっているときは僕も現場で図面を描くのに追われていたのですが、レブロになってからそんなことは無くなりましたね」と効果を実感していると言う横田氏。ネックになっていた作図にかかる時間を少なくできたことで、働き方が変わったという。
「作業効率が良くなって、残業時間が減りました。社員に対する負荷が減るので、当然離職率も低くなりますし、良かったと思います」(横田氏)。
また、汎用CADには無かった3DCGをさらに活用することで、新しい付加価値も生まれているという。その取り組みについて田中氏に伺った。
3DCGで直感的に納まりを検討
3D表示を検討段階から使っているという田中氏は、細かな数値を見なくても直感的に理解できるのが魅力であると語る。
「CGはレブロの強みの一つですね。3Dを見ながら一目で納まりが分かるので便利なんです。『ここの検討は力を入れなきゃいけないな』とか、問題点を早い段階で把握できます。作業者にもいろいろ変更に対応してもらわないといけないので、工事が始まる前に洗い出しやすいのは良いですね」(田中氏)。
詳細を詰めていく際、2次元CADだと納まりが分かりづらい部分も「レブロだと一発で分かるので助かっています」と田中氏は言う。熱源機械室の配管など、納まりが複雑な場合も3DCGだと一目で分かるので便利なのだそうだ【図1】。
3D部材自作のメリット
3Dモデルが割り当てされていない部材もあるため、部材の自作もしているという田中氏。「機械などはCG化してしまえば、3Dを見ながら一目で納まっているかどうかが分かるので便利なんです」とそのメリットを語る。
「接続口の情報を入れておけば、図面やCG上で表示できていちいち仕様書を見なくても済みます。部材は一度作ってしまえばずっと使えるので、最初に細かいところまで作り込んでいます」(田中氏)。
田中氏は一目で大きさなどが分かるよう、メーカーのCADデータや外観の画像を参考に、レブロの図形コマンドなどを使って立体にしているそうだ【図2】。
また、チラーを作成した同ケースでは設計会社からの要望を受け、機械だけでなく吊金具も自作した。
「いつもここまで描いているわけではないのですが、この現場だと計算がかなり厳しくて。設計会社から吊りの位置や配管の支持を『何を使ってどういうふうに施工するのか、何メーターピッチで配置するのか、描いてくれ』と詳細を求められました。それに応えてCG部材の作り込みをして、断面図やアイソメ図を作成したんです」(田中氏)【図3】。
メンテナンススペース
田中氏はモデルの見やすさに力を入れており、通路やメンテナンススペースには比較となる人物の3Dモデルも配置しているそうだ【図1・2】。
「機械室やPS(パイプスペース)など、露出する部分に関しては人物モデルを配置するようにしています。寸法を入れなくても人のモデルを置くだけで、機械の大きさや人が動くスペースが分かるようになりますから。施主さんもメンテナンススペースは気にしています。『10年後や20年後、機械が交換できるように、次のリニューアルも含めて検討してくれ』と言われます」(田中氏)。
3Dで直感的に分かるようにするのはもちろん、田中氏は図面にもメンテナンススペースなどの注意事項を記載している【図3】。他業者との取り合いで図面は変化するため、基本的な事柄でも「見える化」することでミスをなくし、施工をスムーズにしているという。
関係者とのコミュニケーション
また、他の業者や設計者との意思疎通のために、田中氏は外観部分を3Dで作り込むこともある。小学校体育館のパッケージエアコンの位置決めをした案件では、バスケットゴールやルーバーの3Dモデルを作成し、一目で施工案が分かるようにした【図4】。
「パッケージエアコンの吹出口が鉄骨の架台に近いと結露する可能性もありましたし、点検口などもいろいろと検討をしなければいけなかったんです。設備だけじゃちょっとどうにもならない話なのですが、“実際こうなりますよ”っていうモデルを描いてしまえば、設計側でもCGを見て“一目で分かる”。そのために細かいところまで描きました」(田中氏)。
3DCGの活用で現場のコミュニケーションを円滑に
図面のほかに3DCGを付けると、施工現場でも役立つと田中氏は言う。
「現場の従事者に図面のほかにも3DCGを見てもらって、施工上問題がありそうな部分をあらかじめウチから伝えて……さらに厳しければ実際作業する職人さんにも現場に来てもらって相談します。僕は図面書きの目線で作って、現場サイドの目線を入れていくようにしているんです。そういう作業もパソコン1台あれば全部できるので助かっています」(田中氏)。
現場とのやりとりを中心に行っている許氏は、タブレットなどICTツールも活用している。
「レブロのデータをIFCデータに変換して、図面のPDFと併せてタブレットに入れ、打ち合わせや現場での確認用に使っています。平面図だと図面ごとに紙を持っていかなければならないのですが、これは全部一つのデータだけで済みます。大規模な現場なので、データを持ち歩いて管理できると効率的なんです。事務所に戻るとなると時間の無駄になりますし、手元でデータを確認できるので、田中さんに電話で確認しなくてもよくなります」(許氏)。
ペーパーレス化のほか、CG表示の分かりやすさもメリットだと許氏は語る。
「普通の平面図だと検討しにくいところ――取り合い調整や吊金具などの施工の打ち合わせで、図面だけでイメージすることは大変ですが、その点、3DCGだと便利です。例えばダクト屋さんと取り合いの検討をしているときは、平面図と言葉の説明だけだと分かりづらい。もちろん断面図を見れば理解できるんですけど、CGを見れば直感的に、一瞬で分かりますよね。詳細な寸法は図面を見ないといけないんですけど、せめて現場の確認の段階とか話し合いの段階では、職人さんがいちいち図面を見なくても、イメージだけですぐに分かってもらえたほうが良い。“一目見て理解できる”のが一番のメリットだな、と思います」(許氏)。
分かりやすい図面とCGの反響は大きいと横田氏も言う。
「3DCGを実際に打ち合わせで見せることによって、お客さまに対して『こういうふうになりますよ』っていうのがすごく提示しやすくなりましたね。打ち合わせで見せて直感的に理解してもらえるので、有意義な時間を確保できるんです。現場の方からも評価してもらえますし、“次も正和工業さんで”って言ってもらえるので、リピーター獲得につながっています」(横田氏)。
また、許氏は職人への説明以外にも、現場代理人としてスムーズな進行ができるように3DCGを活用しているそうだ。「機械の搬入計画とか、実際に搬入できるかどうかもレブロを利用して検討しています」(許氏)。
今後の課題と教育
作図の田中氏・現場の許氏と、スペシャリストが育っている同社。今後の課題は、設備部全体の教育だという。
教育を担当する田中氏は、単純な操作を覚えるだけではない技術の底上げの難しさを語る。
「ダクトとか配管を平面図で描いたり、ただ断面をビューに出すだけなら、すぐできるようになるんです。それを、図枠や凡例表、キープラン等をつけて、“設計者や施主に見せられる図面”に仕上げることができない。『施工図としての表現』を理解しているかどうかが、一つの課題だと感じています。そういった表現を教育できたらな、と思います」(田中氏)。
同社では田中氏を中心に、施工図としてまとめる方法など、現場で通用するためのノウハウを教える勉強会なども今後予定している。また、外部の研修なども入れて設備の知識やスキルを身に付けたり、施工管理者としての教育もしているという。
「現在はレブロを使えるレベルに差があるので、教育してどれだけみんなを同じレベルに持っていけるかが、今後の課題だと感じています。設備部ではメンバー全員にレブロを渡していますが、せっかくいいソフトを入れているので、最大限活用できるのが一番ですからね。各自のレベルが上がれば、当然、現場代理人のスキルも上がりますし。そういった全体の底上げが、今後の課題ですね」(横田氏)。
CORPORATE PROFILE
本社 | 東京都足立区青井5丁目13-7 SHOWAコーポレートビル |
設立 | 1973年 |
代表者 | 代表取締役 横田 生樹 |
資本金 | 7,260万円 |
従業員数 | 109名(2021年8月現在) |
事業内容 | 総合建設業 |
2022.1.14
※「Rebro®」は株式会社NYKシステムズの登録商標です。 その他記載の商品名は各社の商標または登録商標です。
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※本事例で記載されている内容、部署名、役職は取材時のものです。