レブロ活用事例

時代を見据えたBIMツールの導入
地方発信の新たな挑戦

ミューパートナーズは愛知県で20年以上続く建築設備設計事務所である。行政の庁舎や病院、ホテル、オフィス、飲食店、工場など、多種多様な施設の設備設計を総合的に行い、現在は1,000件を超える建築設備の設計・監理を手掛けている。ライフサイクルコスト低減を軸に、設備更新や保安メンテナンス、運用改善までさまざまな製品・サービスを組み合わせた対策を行ってきた。近年は時代に合わせ、BIMを用いた提案も始めているという。
汎用2次元CADからBIMツールへと大きく転換し、新たな挑戦を始めようとしている同社。新体制に進めるまでに、どのような取り組みを行ってきたのか。代表の植田氏と電気設備を担当する牧氏、レブロ導入の推進を担当する北村氏に話を伺った。

汎用2次元CADから設備専用3次元CADへ

株式会社ミューパートナーズ様のプロフィール画像

 手書きからCADへの移り変わりで、時代は大きく変わった。その大きな変遷を直に経験した建築士の植田氏は、CADを使い続けて20年近くたった今、次の波――BIMの導入が必要だと感じたという。
「BIMの普及はまだまだ課題はありますが、いずれ来るだろう、と。そこで、使うならどのBIMソフトが良いか候補を比べたところ、導入当時で優れているのは圧倒的にレブロだったんです」(植田氏)。
 ゼネコンへのレブロの普及具合などから業界的な流れを感じとった植田氏。これまでのCADで十分仕事はできていたが、第二の転換を決めた。

ツールの違い

 20年近くノウハウのある汎用2次元CADから設備専用3次元CADへの移行。概念からガラリと変わったツールだが、その違いが面白いと植田氏は楽しそうに語る。
「手描きやその延長の2次元CADと違って、レブロだと断面図などもリアルタイムで作図されるから、描いていても面白いですね。レブロだと1本線を描くだけで、平面と断面、3次元が連動して描けるので、なんて便利なんだろうって思います」(植田氏)。

 実作業では専用CADならではの利便性があると、電気設備を担当する牧氏は言う。「電気設備の場合、照明器具の一括配置や、ドラッグ一つで配線を結ぶことができるので便利です。同じソフト(レブロ)上で照度計算ができるのも良いですね」(牧氏)。

 また、基本的に平面で作図を進めていく設備図面だが、3DCGも活用していると牧氏は言う。例えば、ダクトは梁下を通れないことがよくあるため、スリーブやダクトの交差部の納まりを検討するのに使用しているそうだ。

梁貫通確認 (NG箇所)

▲梁貫通確認 (NG箇所)
客先から要望があれば梁貫通箇所を3Dで提示する。

設備教育におけるメリット

 作図の利便性だけでなく、「教育面」でも効果があると植田氏は言う。「“お手洗いの後ろはこのような設備が繋がっているのか”とか、“実物がこのようになっているから平面図で見るとこの表現になるんだ”とか、“この記号で表すのか”とか。平面図と実際のイメージが繋がることは大きな助けになります」(植田氏)。梁や柱、配管やダクトなど、建築について何も知らない新人も、3Dで実物を知ることで設備を覚えていくことができるという。「3Dで実際の施工をシミュレーションできるので、経験の浅い人でも、“このような設備を自分達で設計して、建物にどのように設置されるか”理解できるし、実感もできる。3Dは“見える化”できるのが、便利ですよね」
(植田氏)。

▲免振、地上9階の事務所ビル
平面図だけでなく、機器と配管の繋がりや各配管の高さ、納まりも3DCGで検討できる。

 また、植田氏は図面のチェック機能についても指摘する。
「レブロだと3Dで正確な値が出て、NG判定もできます。CAD上で納まりがはっきりわかるため、事前に建築担当にアピールできます」(植田氏)。

実作業と並行しながらの新しいツールの導入

 レブロの導入は、現場で実案件に投入しながら進められた。第一の課題は、「元のCADと同じ作業ができること」だったそうだ。「組織を変えて人数を増やすわけでも、今の仕事が減るわけでもない。長いスパンで考えて、とりあえず今までのCADで普通にできたこと――図面を商品として納められるようなところまでもっていこう、と」(植田氏)。

スペシャリストを育てる

 こうした移行について、スタッフの間では試行錯誤の連続だったそうだ。導入直後はレブロのサポートサイトにある動画教材で操作を学び、その後は実案件でレブロを使って疑問点を解消し、習熟度を高めていったという。北村氏は当時を振り返ってこう語る。「レブロのサポートセンターの方には大変助けられました。新しいものを取り入れる際には、どこかに相談できる場所が存在することが直接的な推進力に影響を与えると実感しました。本当に素晴らしいサービスだと思います」(北村氏)。

 教材で機能を知るだけでなく、慣れるほど実際に操作してみることが大切だと牧氏も語る。
「移行したときは、“これまでのCADでできる案件に関してもレブロでやろう”と強く決めて、とにかく触ることをメインにやってきました。今私が教える立場になったときも、どんどん触ってもらうことを心がけて教えています。例えばショートカットコマンドなどを活用してもらって、自分仕様で描いてもらえるようにしていますね」(牧氏)。

 実務をこなしながらサポートに問い合わせ、実践に即した各自のスキルを高めていた同社。現在は各人の調査時間を効率化するため、疑問点を一人に集約してサポートに問い合わせている。“あの人に聞けばわかる”という社内のスペシャリストを育て、知識を共有することで、社内全体のノウハウや習熟度を上げているのだそうだ。

 実際に使ってみて、現場から出てくる問いが大切だと植田氏も語る。
「“もっとすごいツールなら例えばこんなことはできないか?”と興味をもって考えていくこと。それが一番いいと思いますね。そういった積み重ねの先に、業務をぎゅっと効率化できる完成度の高いモノが見えてきますから」(植田氏)。

社内での情報共有の様子

▲社内での情報共有の様子
良い方法があれば都度集まり、社内ナレッジの共有を進める。

30%の効率化を実現

 現場の取り組みもあって、現在はスタッフ間での図面作成も従来通りできるようになってきたそうだ。それだけでなく、専用CADを導入した成果も出始めているという。例えば2次元CADに無かった「高さ」という概念を意識して作図していけば、自動的に隠線処理がかかる。また、配線の長さや機器の種類を部材の属性情報から一括で拾えるようになったことで、トータル時間は2/3ほどに短縮されたそうだ。現在は5、6階建ての新築案件などのように、規模の大きな案件ほど効果があるという。ネックは属性情報の入力の手間で、例えば改築設計だと改修前後2パターンの図面に情報を打ち込まないといけないため、手間に見合った効果がまだ薄いと牧氏は言う。「しかし、このあたりは操作に慣れたり、打ち込む情報や打ち込まなくてもいい情報をしっかり判別したりと、ノウハウができてくればもっと格段にスピードが上がり解決できるのかなと思います」(牧氏)。

 こうした「属性情報の利用方法」について、さらに詳しく伺った。

図面の「情報」を活かす

 レブロは図面作成時に各配管や機器の高さ、長さといった情報を入力している。北村氏によると、こうした汎用2次元CADには無かった「情報」の活用を進めているそうだ。

 例えば、これまで図面作成後に手入力していた長さなどの情報を『プロパティの保存』で一括出力して集計し図面上に反映したり、各種計算に必要な値も一括で拾えたりするのが便利だと北村氏は語る。

「レブロは使いたい情報をカスタマイズして出せる、『プロパティ保存』コマンドが大きな特徴だと考えています。案件によっては、『拾い集計』コマンドよりも細かく情報を出したいときがあって、“1階の、この部分だけの、Aという部品を数えたい”とか、配線の番号などで特定して“何々という配線を数えたい”とか、設定すれば自分たちが拾いたいものだけを集計できるのが便利です」(北村氏)。

書類作成の自動化

 そのほか、作図時に入力した情報や『盤の管理』で設定した親子関係・機器器具の情報を使い、積算や盤図などの書類も作成しているそうだ。電気設備の例で、牧氏に説明していただいた。

 【図1】は「盤の出力表」の例だ。赤字がレブロのデータで、黒字が自作したフォーマット枠である。エクセルの枠幅を調整して出力し、レブロから出力したデータを枠に重ねているという。表の情報は平面図とリンクしているため、例えば3番の数値が500になれば自動で500に変更される。

 牧氏は「レブロで積算の集計表まで最終的な成果品として出せるくらいにしたい」と今後の取り組みについて語る。『盤の管理』やレブロ内の情報を活かし、盤図の作成などで、手計算を削減していきたいそうだ。
「今は手作業でデータを移しかえていますが、図面のデータをもとに提出書類ができるのが一番良い。電気だと照度計算(【図2】)はもうレブロでできるので、あとは変圧器容量とか幹線計算ですね。国交省の計算書の手引きに従い必要な情報は手入力していますが 、負荷容量も幹線計算用の長さも全部レブロに入っているので、『プロパティの保存』や『データリンク機能』を活かして、自動化できないか今検討しているところです」(牧氏)。

【図1】盤の出力表

▲【図1】盤の出力表

【図2】事務室の照度計算

▲【図2】事務室の照度計算

 北村氏はレブロのアップデートに合わせて使用方法を改善しているという。
「“こういうことができないか”とサポートに相談すると、後日アップデートで改善されることもあって、さらにサポートからもきちんと連絡をいただけるんです。そういうところが嬉しいですよね。先日待望のアップデートがあったので、テストしているところです」(北村氏)。

 こうした取り組みについて、植田氏は情報を活かすことで正確性も担保できると指摘する。今後は情報を活かして積算や照度計算も含め、その他各種計算類も進めていきたい
そうだ。
「汎用2次元CADは描画ソフトなので、全てが目視による確認ですが、レブロだとデータでエラーをチェックできるから素晴らしいです。図面を描けば積算までいって、二度も三度も拾わなくてよくなる。そうすると、生産性が上がります」(植田氏)。

BIMツールとしての今後の展望

 次のステージに向けた展開は、ツールの活用だけではない。「そろそろステップアップできるような体制ができてきた」と語る植田氏は、BIM案件の受注も進め、初めて8階建て事務所ビルのBIM案件を引き受けたと言う。
「建築はRevitで描いていて、全てBIMで進んでいました。設備設計もBIM対応してほしいということで引き受けたんです。設備設計としては施工でも利用できるBIMデータを作成できますので、施工会社が決まり次第、そのままデータをお渡しして、フルBIMで対応できると考えています」(植田氏)。

 こうしたBIM案件の受注を、これから増やしていきたいと植田氏は意気込みを語る。
「これからBIMツールとしてのレブロをどうやって活用していこうか、手探りの状態です。できればBIMで積極的に仕事をしていきたいと思いますので、ゼネコンや設備工事業者など、BIMが必要なところとタイアップしていけたらと考えています。案件が増えてきたら、ゆくゆくはBIM専属チームを作る方向性で、レブロを活かせる体制にしていければと考えています」(植田氏)。

▲ 外構図 (上)と冷温水機器廻り(下)の平面図と3DCG

▲ 外構図 (上)と冷温水機器廻り(下)の平面図と3DCG

▲ 外構図 (上)と冷温水機器廻り(下)の平面図と3DCG

▲ 外構図 (上)と冷温水機器廻り(下)の平面図と3DCG

 また、自社だけではなく建築設備設計業界の展望として、国策であるBIM化推進に尽力する植田氏によると、全国的にはBIMへの関心はまだ低く、興味はあっても8割以上は導入を考えていないか、必要としていないそうだ。「でも、今後はそういった関心がより増えていくと思います」と植田氏は語る。
「当社としては、具体的な成果を出して、生産性を向上させるために国側でもツールを使った提出書類を認めてほしいとか、色々な折衝をしていきたいと考えています。我々のような設計事務所は人力が限られているので、役所への提出が改善されれば、ものすごく手間が省けるんですね。あとは若い人たちの入社の動機にもなるかもしれないし、業界のためにもこれを成功させたいなと思います」(植田氏)。

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CORPORATE PROFILE

株式会社ミューパートナーズ

本社 名古屋市熱田区新尾頭3丁目2番1号 KVK金山ビル2F
設立 2005年
代表者 代表取締役 植田 亮
資本金 1,000万円
従業員数 19名(2021年10月現在)
事業内容 建築に関する企画、設計、監理、調査

 

2022.01.31 2022.02.14改


※「Rebro®」は株式会社NYKシステムズの登録商標です。 その他記載の商品名は各社の商標または登録商標です。
※記載事項は予告なく変更することがございます。予めご了承ください。
※本事例で記載されている内容、部署名、役職は取材時のものです。